車両基地のある、南宮崎駅。
ガラガラと野太いディーゼル音と、構内を行き来する車輪の軋み音が、耳鳴りのように常に響いています。
愛しの宮崎時間も今日で終わり。
これから、空港へと向かいます。
空港行きの列車は、日南線の路盤を共用し、空港近くで分かれます。
わずかなお客さんを乗せたディーゼル列車が、のんびり走っている、おもちゃ鉄道みたいな日南線。
そこを、宮崎の空港列車は、脱兎の如くありえない速さで加速してゆきます。
ですが、電化されているのはあくまでも空港線のみ。
田吉駅で、非電化の日南線は真っ直ぐに直進し、草蒸した彼方へと消えてゆきます。
一方分岐した空港行きは、1分であっという間の、宮崎空港到着です。
電化(近代化)の凄まじいパワー。
旧態然とした日南線は150km先の志布志に、これから2時間半かけて、えっちらおっちら山越えです。
そして、最先端技術の空港行きは、1500km彼方の大都市東京に、200人以上を一気に運びます。
一方は超売れ筋の全国的なアイドル、かたや一方は、殆どお客の来ない雛びた地方芸人。
みたいなものかな、となんとなく思います。
ですが、いつ来てもまだ元気に頑張っている、10年前の佇まいのまま、タイムスリップしたかのような、当たり前の景色。
近代化の恩恵に浴しながらも、忘れたくない風景がここにはある、といつも感じます。