夜のパーキングエリア。
運転の合間に疲れた体を休めるべく、たくさんの車がお互いを干渉することなく、アイドリングで快適な車内空調を得ながら、それぞれの世界の中に静もっています。
車は金食い虫、とよく言われます。
ですが、今夜のようにせっかくの小雨降る初夏の晩に、お気に入りの音楽をかけて、夜のドライブを楽しまない、という法はないのではないでしょうか。
大切な楽器をどんなライブ会場にでも一緒に運んでくれ、通常の快適な移動手段という使命にも充分に応えてくれ、たまの休みにはこうして気まぐれなナイトドライブに付き合ってくれる。
こういうの、何て言うか知ってます?
相棒、ですよ。
フツーに。
相棒。
ただこの相棒、お遍路さんの金剛杖に書かれた『同行二人』の意に、通じるかとも思います。
雨が降っても吹雪いても、しっかりと持ち主を守ってくれる屋根つき自走家屋。
旅芸人の馬車、というミュゼットの古い曲がありますが、昔の放浪の芸人たちにとっては、興行の長い1日を終え、潜り込むその馬車こそが、いかなる時も、自分たちを守ってくれる、心と体の寄り添い場所であったと思います。
いまでは、すべて鉄の馬車。
その鉄の馬車も、テクノロジーの発達で、自動運転システム、電気推力と、ただの日常の足代わりとしての便利グッズ。
人生を共にした、昔の旅芸人の馬車の面影はありません。
そもそも、旅芸人(タレント、演奏者、アーチストや芸人)自体が、飛行機、新幹線で移動する時代。
ですが、こうして何もない所にポツンといると、その相棒の存在が、とても頼り甲斐のあるものに、感じることが出来ます。
夜の闇も、見知らぬ地も、相棒がいてこそ、免れる孤独。
44年前の古い鉄の馬車に身を沈めて、ゆったり流れる雨の夜。
同行二人に、しばし時を過ごした夜でした。