バスの入線。
夜の冷え込みが徐々に忍び寄る、とある黄昏時。
ベッドタウンの駅のターミナル。
分刻みに入っては、走り去って行くバスの群れ。
狭く、入りくねったバスロータリー。
その細い通路を、知らない地名を掲げ、うねるように次々に現れるバスの前面は、実に壮観。
そしてまさに秒刻みで、多くの人を乗せては、四方八方に散り散りに消えて行きます。
乗合とはまさにこのこと。
いろんな人生を乗せ合わせて、バスは走ります。
それぞれ自分の行きたい最寄りまで、快適に黙々と運んでくれるバス。
一地方の小さな町ながら、網の目のように広がっている路線網の数だけ、その先には聞いたことのないたくさんの町があり、それ以上の多くの人生が星のように散らばっています。
なんだか星間旅行みたいですね。
寒い冬の夕暮れ。
知らない駅を降り、スマホで調べた停留所番号から乗り込んだ、『中90』とかいう見知らぬ路線番号のバス。
ですが、暖かい車内に入った私は、そこに全幅の信頼を寄せています。
大袈裟ですかね?
でもやはり、そんな気分にさせられます。
冬の夜の寒気を切って走る、居心地の良いひととき。
目的の停留所でお礼を言ってバスを降ると、あとは徒歩で目的地へと向かいます。
短い旅だったが、なんか素敵な時間だったな。
細かな時刻表通りに、見事なまでに、きちんとサポートされた住みやすい、優しい国。
そう思います。
大袈裟ですかね?
でもなんか幸せですよ。
知らない町でも、安心して自分で歩けて、自分で旅して。
当たり前といえば当たり前ですが、人生、先はわかりませんから、ほんの少しの時間でも楽しく過ごせれば。
ささやかな、幸せ旅を満喫した年の暮れでした。