2024-10-01

工事現場

 こないだ、深夜帰宅した時のことです。

団地内の周回道路を歩いていると、先の道端になんか黒い物体があるような気がします。

暗いとこでは近頃全く見えないので(最近のメガネはどうなっとるんだ!vol.2)、横を通過しても全くわかりません。

でもなんか人っぽい気がする。

 

 黒いズボンにちょっと明るめのシャツ。か?

かがんでじっくり見たら、何と人が倒れていました!

うわっ!と思いました。

ここは、団地内とはいえ車が走る道です。

もしかして跳ねられたか?と思い、動揺しながらも周りに血痕がないか見てみました。

どうやらそれらしきものはないようです。

 

 でも、やはりひき逃げとかだったらやばいので、でも死体だったら迂闊に触ると、犯人と疑われるかもなんで、対処に迷いました。

取り敢えず声をかけてみました。

『おっちゃん!おっちゃん!大丈夫?』(お年寄りだった)

爺さんはピクリともせず、一切の返答はありません。

なんかやば〜い雰囲気です。

やっぱり跳ねられたかなんかか?と警察に通報しようかと思いましたが、その瞬間、

『ンゴッッ』

と鼻が鳴りました。

顔を近づけてみると

『スー、スー』

実に穏やかな寝息です。

 

 そう、涼しくなってきて、じいさんたら道端で安眠していたようです。

こんなとこで寝んなー!と、思いましたが、いくら声をかけてもスヤスヤ寝入るばかりで、びくともしません。

そう、暗い道端で車通りもあるので、このままだと本当に轢かれてしまいます。

でも起きひんし。

 

 あーもう! と、思いましたが、横のゴミ置場に三角のコーンが目に入りました。

あ、これ使えるかも、と、爺さんの黒いズボン側に、コーンを立てると、一見ちょうどマンホールの工事現場っぽいです。

でも、自分的には作品上イマイチな気がしたので、さらに捨ててあったアイロン台を持って来て、足元に囲むように横に立てました。

 

 完璧!な造形が、出来上がりました!

万一車が来ても、ヘッドライトに浮かび上がる、白いアイロン代に赤い三角ポール。

まずギョッとして、ここは避けるでしょう。

そして、人が倒れているのを目にし、さらにギョッとし、私が作った完璧な防御陣地に思いを馳せ、名もなき若きアーティストの完全なパフォーマンスに感動することでしょう。

 

 爆睡爺さんと、アイロン台と、パイロン。

言ってみれば、「部屋とYシャツと私」みたいなもんでしょうか?

 

 翌日、パイロンとアイロン台はゴミ置場に戻されていました。

道ゆく幾人の人が、感動したかが気になるとこですが、少なくとも清掃の方は気づいてくれたでしょう。

あ、爺さん、目を覚まして先に帰ってたら、気づかんか。

ちくしょう。