2011-11-15

ねぐら

 ヤフーの天気予報は、1時間おきの雨雲予想をしてくれるので、なかなか頑張ってるなあと思います。

そして、よく裏切られますが。

 

 こないだお仕事で、都心に出た時のこと。

ヤフー雨予想は、都心では深夜ところどころ一時的ににわか雨、ということだったので、それなら充電走行可能、バイクだ、と思ったのが、運の尽きでした。

 

 行きは実に快適。

そして、夕方6時過ぎから、なんとお外は霧雨状態。

 

 何じゃこりゃあ!(by松田優作) ほんと、そんな気分でした。

外も、ナベ心もすっかり暗くなっていき、そして刻々と雨足は、ひどくなる一方です。

そして、ついにお仕事終了。

ビルの閉館時間になりました。

 

 あーあ、濡れて帰るのかー。

にわか雨? 深夜? 所々? どこが!

と思っていたら、スタッフの人が、

『漫画喫茶で、雨宿りしていったらどうですか?」

と、言ってくれました。

 

 そう、実を申しますと私は、この漫画喫茶とやらに行ったことがなかったので、この発想が出て来なかったのです。

 

 近くにあった深夜の漫画喫茶は、狭い空間でした。

基本的に店内は明るく、快適に過ごせるよう、静かで清潔なのですが、なんか夜の都会で、 ” 行き場をなくした疲れ果てた人たちの最後の漂着場所 ” といった感じ。

受付のスタッフの人も、目を合わすことなく、無表情なまま、機械的に案内をしてくれるだけでした。

 

 それでも、この大雨の中、かけがえのない自分空間です。

私の居場所は『リクライニングの25番』。

迷路のような通路を奥に行き、『25番』と書かれた、形だけのドアを開けて中に入ると、狭い縦長の空間に、机とパソコンと、リクライニングチェアがあります。

 

 水のしたたるビニール傘と無料サービスのドリンクを机に置き、深夜なので出来るだけ音を立てないよう、無理な体勢でゴワゴワの皮ジャンを脱いでハンガーにかけ、狭いチェアに深々と沈んで、苦労してブーツを脱ぎ、そこでようやく1日の深いため息をつきました。

 

 狭い縦長の空間は、わたしのその日の最後の砦でした。

 

 結局そこに、3時間ほどいましたでしょうか。

コンビニ弁当をひとり黙々と食べ、懐かしい漫画をパラパラとめくり、ヤフー天気予報で外の様子を知り、インターネットを眺め、無料のコーヒーを飲み、トイレで顔を洗い、隣からは誰かのスースーという寝息が聞こえ。。。

 

 雨が上がり、夜の都会の地下の一角から外界に出ると、冷たい冷気が顔を刺激し、すっかり雨の上がった雲のスキマから星がちらっと見えました。

 

 ちょっとしたホームレス体験だったでしょうか。

やはり人間も生き物ですから、ほんの僅かな居場所でも、安心して安らぐ『自分の巣』というものは必要なようです。

 

 ヤフー天気予報が外れてくれたおかげで、ふだん体験しない、貴重な時間を過ごせた様な気がしました。