「どうも、あたしロサンゼルス警察の、コロンボといいます。」
悲しみに暮れる演技をしている犯人に、殊勝な態度で同情を示しながらの初対面シーン。
ピーター・フォーク主演のご存知、『刑事コロンボ』。
「いえ、ただね、ちょっと気になったもんですから。いやわたし、しょっちゅう、こういうことあるんですよ。ついど忘れしちゃって。
でも気になって仕方がないもんですから、つい何度も聞いてしまうんですが。
わるいクセでね。
かみさんにも、しょっちゅう言われるんです。メモを取らないからだって。
いやメモは取るんですがね、今度はそのメモをどこかへ忘れるんですよ。
で、なんでしたっけ? あー、そうそう、この皿は灰皿ですか?」
犯人宅へ時間外の訪問をして、悪びれながらも唐突な質問をするコロンボ。
「あ!あとひとつだけ!あの日は晴れてましたが、ここがなぜか濡れてたんですよ。
じつに不思議でね。なぜでしょうか?お解りになります?」
「あー、それはうちでは、スプリンクラーを自動でかけてるから、きっとそれで濡れてたんじゃあないですか」
「あ!スプリンクラーね!そっか、そいつは気付かなかった!なーるほど。これで全部スッキリです!(ニコリ)ご協力感謝します。」
「いえ、いつでもまたどうぞ(笑)」
思いもよらなかった、きわどい証拠を突きつけられながらも、うまく言いくるめられたと思い、ホッと上機嫌の犯人と、笑顔のコロンボ。
「いったい私が犯人とでも言いたいのかね!コロンボさん!」
「いーや!とんでもない!そんなこと、コレッぽっちも思ってません。
第一あなたが犯人なら、つじつまが合わないんですよ。動機という点でね。」
核心に近づきながらも、うまく相手の怒りを、ひょうひょうとかわしながら、犯人の描いたシナリオの綻びを解していくコロンボと、だんだんいらだちを隠さなくなってきた犯人。
「そう言えばあの日は、予想外の暑い日でしたね。気温も37度を超えてたとか。
それじゃあ今夜は、どうもごちそうさまでした。」
と犯人に対して、決定的な一言をさりげなく残して、笑顔で夜の闇に消えていくコロンボ。
「いや、コロンボさん。あなたはここまでよく、ワインを勉強されましたな。」
全てが暴露されたにもかかわらず、なぜかホッとした様子の犯人が、連行中にコロンボからボトルとグラスを贈られ、それを一口堪能しながらつぶやいた、犯人の敬意の混ざった言葉。
H・マンシーニ作曲のご存知のテーマ曲。
名曲ですね。
もともとはコロンボのテーマ、ではなく、あの時間帯の刑事ものシリーズ全体のテーマ曲、らしいのですが、日本では刑事コロンボの曲として定着したようです。
宮崎では土曜日夜の、ゴールデンタイムに放送されてました。
この曲を聴くと、土曜日の夜の密やかな開放感と、明日は日曜日という楽しい嬉しいひとときの高揚感で、しあわせいっぱいになった小学校の頃、を思い出します。
コロンボの大好物だったチリが、たまに無性に食べたくなり、おふくろサンにねだってはみたものの、そんなもの、当時の宮崎のスーパーには売ってなかったですね。
子供の頃の、思い出のヒーローは昨年、心臓マヒでなくなりました。
晩年は、自分がコロンボだったことすら、すっかり解らなくなっていたとのです。
わたしにはいつまでも、子供の頃のままの、ヨレヨレの上着とオンボロ車で登場するコロンボでしたが、いつのまにか、懐かしい日々となっていたようです。
でもあの、やぶにらみの不思議な笑顔が、日の光を浴びて、心の中で今もいきいきと健在です。
たまに休日前夜、この曲を思い出しては懐かしい時を反芻して、夜更かししてしまいます。
いよいよゴールデンウィークですね。
休日前夜は皆さん、充分ワクワクしましたでしょうか?
皆さんも、楽しい嬉しいひとときをお過ごしください!