居酒屋に入ると、焼き物やビール、ニンニクやタバコの入り交じった、独特の匂いがしますよね。
飲んべえさんにとっては、アフタ-5の、えも言えぬ幸せな時間帯の始まり、の香りだと思います。
知り合いのスタッフで、毎晩のように飲み歩くので、お金が貯まらないお人がいて、仕方がないので酒代を稼ぐ為に、音楽スタッフの仕事後に、居酒屋店員を始めた強者もおります。
私はですね、この酒場の香りを嗅ぐと、えも言えぬ不毛感に襲われるのです。
それは大阪から東京に出たての頃でした。
音楽のお仕事はぜんぜんない状態でしたから、日銭を稼ぐ為に、居酒屋でアルバイトを始めました。
お仕事内容は、フード、ドリンクをエンドレスに出しては引っ込め、並べては片付け、とっ散らかったテーブルを速攻片付け&同時にセッティング。
年下の態度の悪い店長に気を使い、酔っぱらったオヤジにからまれ、厨房の隅で5分で賄いを食べ、5分でタバコを2本吸い、気がついたら朝の5時という、エンドレスな毎日。
朝の空気だけは、絶妙に爽やかなんです。
朝日も元気よく輝いていて、さあこれから一日が始まるぞーという、出勤する人々の勢いの中で、私はヘトヘトに疲れながら帰宅。
シャワーを浴びながら身動き出来ず、いも虫みたいに一日死んだように寝て、気がついたらもう夕方の、居酒屋出勤時間になっています。
もう人生が、居酒屋メインに置き換えられたみたいでした。
来る日も来る日も途切れることなく、立ち働く日々。
飲んべえ自体が途切れないですから、このお仕事は始まりも終わりも進化もなにもなく、ただ延々毎日繰り返されるだけなんです。
もし前述の酒飲みスタッフみたいに、酒好きであれば、このお仕事は雰囲気的に、まったく苦ではないハズです。
でも私には何が辛いかって、自分が飲む立場ではなく、人が楽しそうに飲んでる横で、立ち働くこの職業。
一体なんなんだ、です。
今こうして書きながら、ようやく解った!解りました!これだったんだ!
それで居酒屋の匂いが、すっかりトラウマになってしまったようです。
でも頑張って、音楽が軌道に乗るまでに2年弱ほどやりましたかね。
ですが今でも、居酒屋のかぐわしい匂いを嗅ぐと、反射的にとってもつらーい気持ちになるんです。
なので、これからは早く、かぐわしい匂いはそのままに、かぐわしく感じられるくらい、楽しく飲むぞー。
そしてお金がなくなり、また居酒屋でバイトか?