2011-06-15

バイト時代

 居酒屋に入ると、焼き物やビール、ニンニクやタバコの入り交じった、独特の匂いがしますよね。

 

 飲んべえさんにとっては、アフタ-5の、えも言えぬ幸せな時間帯の始まり、の香りだと思います。

知り合いのスタッフで、毎晩のように飲み歩くので、お金が貯まらないお人がいて、仕方がないので酒代を稼ぐ為に、音楽スタッフの仕事後に、居酒屋店員を始めた強者もおります。

 

 私はですね、この酒場の香りを嗅ぐと、えも言えぬ不毛感に襲われるのです。

それは大阪から東京に出たての頃でした。

音楽のお仕事はぜんぜんない状態でしたから、日銭を稼ぐ為に、居酒屋でアルバイトを始めました。

 

 お仕事内容は、フード、ドリンクをエンドレスに出しては引っ込め、並べては片付け、とっ散らかったテーブルを速攻片付け&同時にセッティング。

年下の態度の悪い店長に気を使い、酔っぱらったオヤジにからまれ、厨房の隅で5分で賄いを食べ、5分でタバコを2本吸い、気がついたら朝の5時という、エンドレスな毎日。

 

 朝の空気だけは、絶妙に爽やかなんです。

朝日も元気よく輝いていて、さあこれから一日が始まるぞーという、出勤する人々の勢いの中で、私はヘトヘトに疲れながら帰宅。

シャワーを浴びながら身動き出来ず、いも虫みたいに一日死んだように寝て、気がついたらもう夕方の、居酒屋出勤時間になっています。

 

 もう人生が、居酒屋メインに置き換えられたみたいでした。

来る日も来る日も途切れることなく、立ち働く日々。

飲んべえ自体が途切れないですから、このお仕事は始まりも終わりも進化もなにもなく、ただ延々毎日繰り返されるだけなんです。

 

 もし前述の酒飲みスタッフみたいに、酒好きであれば、このお仕事は雰囲気的に、まったく苦ではないハズです。

でも私には何が辛いかって、自分が飲む立場ではなく、人が楽しそうに飲んでる横で、立ち働くこの職業。

一体なんなんだ、です。

今こうして書きながら、ようやく解った!解りました!これだったんだ!

 

 それで居酒屋の匂いが、すっかりトラウマになってしまったようです。

でも頑張って、音楽が軌道に乗るまでに2年弱ほどやりましたかね。

 

 ですが今でも、居酒屋のかぐわしい匂いを嗅ぐと、反射的にとってもつらーい気持ちになるんです。

なので、これからは早く、かぐわしい匂いはそのままに、かぐわしく感じられるくらい、楽しく飲むぞー。 

そしてお金がなくなり、また居酒屋でバイトか?