2015-03-01

先人たち

 使い捨てな時代です。

携帯も、

『その機種はもう部品がないんです』

プリンターを修理に持っていっても、

『もう機種が古いので修理出来ません』

この風潮、いかがですかね。

 

 形あるもの、いつかは壊れますが、まだ99%使えるのに、企業のサポート都合で

『お取り扱い出来ません』

の一言。

企業も企業で、自分とこが作った商品が、元気なのにゴミにされることについて、悲しくないのだろうか。

 

 平和な日本に生まれて、つくづく良かったとは思っていますが、高度成長期あたりから始まったこのアメリカナイズな大消費習慣。

消費こそ美徳とカン違いして、使い捨てに走りはじめた日本のモノに対するモラリティには、つねづね疑問符が湧くのです。

 

 話によるとヨーロッパの国々では、100年以上も前の家具、建物などを大事に使う文化が、今だに数多くの国で健在だと聞きます。

いいものを作り、使える以上は使う。

当たり前だと思います。

また、新しいものを購入することはやはり楽しい事ですが、だからといってまだ使える物を、無造作にどんどん捨てていい事ではないと思います。

使わなくなったら手間を惜しまず、出来る範囲で、少しでもリサイクルに回せば、必要な人が再利用できますから。

 

 こないだ、35年前のポンコツをわざわざ購入し、この先一生大事にするつもりで、部品かき集め作業に入りました。

でもどうしても最重要部品がないんです。

 

 タイミングベルトといって、エンジンの重要な駆動ベルトなんですが、ゴム製なのでいつかは切れます。

10万キロ毎の交換設定なのですが、このベルト、切れたらエンジンが、中でグチャグチャになります。

 

 こいつがない!

ネットで全世界どこ探してもない!! 

海外はアフターマーケットが充実してますから、大概は入手が可能なんですが(やっぱ海外はものを大事にするなあ)このタイミングベルトだけが、ないんです。

 

 もう35年前のクルマゆえに、距離より劣化で、おそらく寿命がきているはずなので、毎回の始動すらドキドキです。

が、エンジンをかけないことには整備が出来ないので、いつ壊れるか、いつ変な振動が飛び出してくるか、命の縮む思いです。

 

 で、その大慌ての状態の中、SNSで同好の士の方々からのご指摘、

『タイミングベルト? その時代のクルマはタイミングチェーンなのでは?』

 

 ガ~~ン!(大袈裟ではなく、頭の中でこんな音がしました)青天の霹靂です。まさに。

 

 えっっっ、そーだったの?チェーン? 改めてクルマを見てみると、確かにベルトカバーが見当たりません。 

ということは、このクルマはオンボロながらも、交換不要のタイミングチェーン駆動だったんだ!

 

 ドバーン!という大波。

どう言う大波かと言いますと、35年の歳月の彼方からの、ニッポンのエンジニアたちの、これぞまさに

『モノをたいせつにする心』。

 

 『使い捨てなんかにしなくても、大事に乗れば、このクルマはいつまでも元気に走ってくれるよ。

モノだけは、いいものを作りましたから。

じゃ、よろしくね。』

 

 35年前のはるか彼方からの、彼らの声が聞こえてきた気がしました。

先人達の地味ですが、プライドと愛を傾けて出来た一台のクルマ。

クルマに出会えたというより、それにかける彼らの思いが、いまもそこにあった。

このことにはちょっと頭が下がりました。

 

 またいつか、この時代のように、ものを大切にする美しい心が、日本のモノ文化に反映されることを願っております。 

なので、携帯会社さん。ガラケーだけど修理、頼みますよ。