2016-03-01

図鑑

 僕が子供の頃、宮崎はチャンネルが2つしかなく、現代と違って勿論、スマホゲームやインターネットなんかもありませんでした。

なので、雨の休日、特に梅雨時なんかは外は暗いし、子供心にも最悪に退屈な時間が流れておりました。

 

 そんな時、チビナベは何してたかというと、家にあった図鑑を眺めておりました。

世界文化社・カラー図鑑百科全24巻。

そのうち、動物、昆虫、魚貝、鳥類、植物、天文と気象。

ナベ家にあったのはこの6冊でした。

文化度のそう高くないはずのナベ家なのに、何故か親が買ってくれてたんでしょうね。

チビナベはそれを飽きることなく、何度もなんども眺め返してはヒマを潰していた記憶があります。

 

 なぜなら、楽しかったのです。

例えば、魚貝なら、描かれてある岩場の魚とかを眺めるのが、超楽しかったのです。

何が楽しいのかって?そういう挿絵を見ながら、魚たちの海の生活を想像するのがです。

ああきっと今頃、このサンゴの穴に巣を作って寝起きしてるんだろうなあ、とか、このワカメの林の中でかくれんぼしながら遊んでるんだろうなア、とか。

 

 その中で、特に好きだったのが『天文と気象』でした。

これは宇宙関係はカラー写真が多用され、若々しい輝きのプレアデス星団や、広大なアンドロメダ星雲とかがとても綺麗だったのと、気象関係は挿絵に海風、陸風、雪雲、いろんな風景があって好きだったですね。

 

 その中で、雨の風景がお気に入りでした。

雨にも色々あって、暖かい雨、冷たい雨、雪、ひょう、あられ。

それぞれの粒のできるまでが絵に書いてあり、それらが降っている情景が挿絵で描かれています。

雪は、赤いカッパを着た少女が道を歩いている風景。

ひょうは、少年が軒下に隠れてやり過ごしている絵。

その中でも特に好きだったのが、どこかの公園に雨が降っている(あたたかい雨)の絵でした。

どこかの街なんでしょうね。

どんより曇った空から、静かに降り続けるあたたかな雨。

 

 ページがバラバラになるほど眺めた彼等も、私が18で実家を出て、月日が経ち、いつの間にか実家から消えて久しく、古い品なので手に入れることもできないまま、遠い記憶の彼方に大事にしまっていたのですが、先日ネットオークションにそれらの古い図鑑が売りに出されていました。

 

 もう一度戻ってきた、子供の頃の時間。

仕事が一段落したら、しばらくの間、また飽きるまで、在りし日のかの時代に行ってみようと思います。