僕が子供の頃、宮崎はチャンネルが2つしかなく、現代と違って勿論、スマホゲームやインターネットなんかもありませんでした。
なので、雨の休日、特に梅雨時なんかは外は暗いし、子供心にも最悪に退屈な時間が流れておりました。
そんな時、チビナベは何してたかというと、家にあった図鑑を眺めておりました。
世界文化社・カラー図鑑百科全24巻。
そのうち、動物、昆虫、魚貝、鳥類、植物、天文と気象。
ナベ家にあったのはこの6冊でした。
文化度のそう高くないはずのナベ家なのに、何故か親が買ってくれてたんでしょうね。
チビナベはそれを飽きることなく、何度もなんども眺め返してはヒマを潰していた記憶があります。
なぜなら、楽しかったのです。
例えば、魚貝なら、描かれてある岩場の魚とかを眺めるのが、超楽しかったのです。
何が楽しいのかって?そういう挿絵を見ながら、魚たちの海の生活を想像するのがです。
ああきっと今頃、このサンゴの穴に巣を作って寝起きしてるんだろうなあ、とか、このワカメの林の中でかくれんぼしながら遊んでるんだろうなア、とか。
その中で、特に好きだったのが『天文と気象』でした。
これは宇宙関係はカラー写真が多用され、若々しい輝きのプレアデス星団や、広大なアンドロメダ星雲とかがとても綺麗だったのと、気象関係は挿絵に海風、陸風、雪雲、いろんな風景があって好きだったですね。
その中で、雨の風景がお気に入りでした。
雨にも色々あって、暖かい雨、冷たい雨、雪、ひょう、あられ。
それぞれの粒のできるまでが絵に書いてあり、それらが降っている情景が挿絵で描かれています。
雪は、赤いカッパを着た少女が道を歩いている風景。
ひょうは、少年が軒下に隠れてやり過ごしている絵。
その中でも特に好きだったのが、どこかの公園に雨が降っている(あたたかい雨)の絵でした。
どこかの街なんでしょうね。
どんより曇った空から、静かに降り続けるあたたかな雨。
ページがバラバラになるほど眺めた彼等も、私が18で実家を出て、月日が経ち、いつの間にか実家から消えて久しく、古い品なので手に入れることもできないまま、遠い記憶の彼方に大事にしまっていたのですが、先日ネットオークションにそれらの古い図鑑が売りに出されていました。
もう一度戻ってきた、子供の頃の時間。
仕事が一段落したら、しばらくの間、また飽きるまで、在りし日のかの時代に行ってみようと思います。