2005-06-15

夜の日本海

 ドライブシリーズ最終回。

このコーナーは、以前の一人旅を、回想風に勝手に述べさせていただいております。

 

 第1回は、深夜の高速道路でのハイウェイラジオ、第2回は、子供の頃の田舎道での、ふとした忘れ物的なモノ。

今回は7、8年前の冬、大坂に車で行った時のお話です。

 

 その時は日程的に余裕があったので、下の道を、しかも日本海まわりで移動していました。

その冬はわりと寒く、山間部はかなりの雪で条件が悪かったので、あまり距離が稼げず、福井の手前で夜になってしまいました。

 

 半分迷ったような状況で、しかも回りの民家は早々に電気が消えてるし(田舎と熱海は夜が早い)、ハラは減ったがコンビニはないし、見知らぬ田舎町での、さみしい状況になってまいりました。

 

 (これじゃあ、がんばって隣町まで行かんと、な~んもないかなあ)

と、ぼんやり考えながら、ふとラジオのスイッチを入れてみました。

すると、田舎のAM局は周波数が違うらしく、神奈川で合わせた局では、ビービーいうのみです。

 

 仕方ないので、つまみをグルグルまわしておりますと、土地柄からか日本海方面、海の向こうの放送が不明瞭ながら聞こえてくるんですよ。

 

『ビ~。。。。チョイヤイサー、ハンチョロミーダ、アーコラ。。。ビービー。』

といった感じです。

 

 なんかおっちゃんが、さかんに一人で喋りまくっていたんですが、韓国、北朝鮮、中国どれかでしょう。

でも、あの海を越えてやってきた大陸電波の、”はるか彼方感”というものが、深夜ということもあり、ビミョーにそそられました。

 

ああ、ここの周波数の隙間に、この放送は隠れてるんだな、などと考えながら、さらに回しておりますと、いきなりド演歌が流れてきました。

 

 『カサブランカア~グッバイ~~~』

皆さんこの歌、御存じですか?あとで調べてみたら、鳥羽一郎の「カサブランカグッバイ」という曲でした。

これがまた、私の日本人としてのブラッドを、激しく刺激したんですな。

 

 曲の内容は、男と女の辛い別れを、ハンフリーボガードの名作『カサブランカ』になぞらえて、”大人の別れは黙って別れる”的な、ハードボイルドな感覚です。

 

 それを日本のオジチャンが、情緒たっぷりに歌い上げた「カサブランカグッバイ」は、ありがちな ”日本海”  ”さみだれ”  ”海峡” 的な、和風ものではなく、洋物ハードボイルド!

(おお、これはちょっとキザに、頑張りすぎやろ〜)と、何故か思わず、微笑ましく思いました。

 

 でも、やはり演歌というのは、子供の頃から、日本人には馴染んでいるジャンルなので、スーッと心に入ってくるらしいです。

 

 その後、時報前のニュースが流れてきましたが、AM電波のあのチープな響き。

いいですね。

AM電波特有の、ざらついた低音の響きが、疲れた頭と体に、心地よかったです。

あのニュースの合間に鳴らされるポン!というベルみたいなのも、昔ながらの響きで、とてもいいです。

 

 なんてことのない、夜のひと時でしたが、日本海で聞いた演歌と、海の向こうの電波、そして、見知らぬ町で聞いた、昔のままのAMラジオニュース。

なぜか今も、旅路の果ての記憶として、鮮明に思い出されます。

 

 皆様、3回シリーズの(そうだったのか)私のドライブの思い出。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

また皆様のドライブの思い出などもあったら、また是非お聞かせください。

では⭐️