2016-06-15

宮崎の太陽

 今まで、いろんな方から恩を受けてます。

その恩があるからこそ今を生きていられてる、とつくづく思います。

言い換えれば、たくさん親切にされた、優しくされた、という事なんですが、これはちょっとした、僕が物心がつき始めた頃のお話です。

 

 宮崎には太平洋を望む堀切峠から先には、鵜戸神宮、サボテン公園、都井岬なる観光名所が連なっています。 

娯楽のない当時、日曜日ともなると、海岸線の一本道はファミリーカーの長蛇の列が続いていました。

サボテン公園には、サボテンステーキとかいう自分的には食欲の湧かない無理矢理メニューもあったようで、まあ宮崎人の商魂、実にたくましいというか、なりふり構わないというか。

 

 で、当時一時期でしょうが、そこには一回10分くらいのヘリコプター遊覧飛行がありました。

で、うちのお父上が大奮発して、安くないそのヘリコプター遊覧飛行に乗せてくれたんです。

で、僕が覚えているのは、妙に超斜めの落っこちそうな状態で、サボテン公園と青い海を何故か、高い空の上から眺めてる風景。

ベル社製のヘリはバブルコクピットで、下が透けて見えるので、そんな碧い海と輝く陽光の記憶の断片が残っています。

 

 その話を、こないだ宮崎に帰った時、親父殿にしたら、

『あー、そうじゃったねー。あん頃はサボテン公園に、遊覧ヘリがあったがねー。』

『で、近くまで行ったら、たまたま操縦士がヘリから出てきて、乗らんですか~、て言うかい、お父さんなビックリしてよー。』

『でん、最初は操縦士が、1回10分3千円ですが(宮崎弁で、10分3千円ですよ、の意。)、て言っちょったっちゃけど、こっちが子供連れやったかい、ずいぶん長く飛んでくれてよー。

で降りてから料金を千円しか取らんもんじゃから、えらい長い時間飛んでくれたですねー、お金はいいとですか?て聞いたら、いいとですよいいとですよ、て言ってくれたもんじゃかいよー。

ほーしたい(あらまビックリ、的な意)、ラッキーじゃったがー。』

 

 たまたまヒマで、もちろん商売もあったのでしょうが、燃料費も嵩むしオーバーワークなのに、子供連れと見てサービスしてくれた、そのヘリの操縦士のおじさん。

初めて乗るヘリコプターというのもあったでしょうが、その話を聞いて、そのおじさんのあたたかい優しい空気が、子供心にとても楽しい思い出の1日を作ってくれたんだなあ、と納得しました。

だから40数年経った今も、とても楽しい記憶のヒトコマです。

 

 操縦士のおじさんにとっては、きっと何でもない1日の仕事のヒト枠だったでしょうが、僕にとっては、キラキラとした青い海の輝きの、とても大事な幼少期の思い出になりました。

 

 優しくする、ということはすごい力を持っていますね。

改めてそう感じた、とある1日でした。