前回も密かなドライブの楽しみ方にお付き合いいただきましたが、今回は第2弾。
これは、幼少のころのお話なんですが、わたしは幼稚園の途中まで、宮崎県の山間部の町に住んでいて、その後、宮崎市内に移りました。
その関係上、たまに市内から山の町に、よくドライブで連れて行ってもらったのですが、その途中の山間部に、子供心に、強烈に強烈にソソる ”あるもの” があったんです。
さてそれは、いったい何でしょう?。
ヒント1、物資を運搬するものです。 『山』と、このヒントで、なんとなくお分かりでしょうか。
で、そのあたりに車が差しかかると、私が
『見たい!見たい!』と、いつも大騒ぎして、車を止めるものだから、オヤっさんは、いつしかそのあたりで
「ほら順ちゃん、飛行機!」
とか言って、注意をそらす作戦にでるようになりました。
おわかりですか?
ではヒント2、林業に関係した施設です。
はい、そろそろなんとなく分かってきました?
正式名称は分からなくても(私も知りません)ああ、もしかしてあれのことか、と思い浮かぶのではないでしょうか?
そう、それは川や谷間を超えて、伐採した木などを、向こう岸に運ぶ架空索道、すなわちケーブルカーのことです。
私の大のお気に入りの、そのケーブルカーは、少し間隔をおいて2基ありました。
一基はもうさびさびで、殆ど使われてないんじゃないかといった代物でしたが、突然道路脇に、何気なく登場するさり気なさと、日常で見ない不思議な形の巻取り機、ワイヤーを支える三角に組まれた支柱、反対岸の木々の間に、すっと消える2本のケーブルの風情など。
もうこれはまったく理由の分からない胸騒ぎ、マタタビに埋もれて失神!といった感覚です。
もう1基などは、大部分が草に埋もれて、現役当時のままの状態で廃棄、放置してあるものですから、もうほんっとに、見るだけでドキドキものでした。
人が使わなくなって久しいという、廃線跡だの、朽ち果てたケーブルだのって、見てると一気に、それらの栄華を極めた懐かしい輝かしい過去へと、気持ちがタイムスリップするようでした。
まだ最近生まれた子供なのに。
確かに、そこにあった存在として現物が残っている。それに大興奮でした。行きはそんな感じです。
で、帰りはといいますと、これは夢うつつの中の残像として記憶にあります。
それは、どんな山道でも、たいがい道脇に等間隔で配置してある、棒の先の小さな反射板。
ライトが当たると、それ自身が光っているかのように輝くあれです。
あれにも表情があるんです。
山道での帰り、眠くなった目で外を眺めていますと、真っ暗な遠くの道に、車のライトに反応して、次々と白い(あるいはオレンジの)ポツポツが見えてきます。
やがてそれは、急速に光を増し、かなり強烈に輝き出します。
でも通り過ぎる瞬間、輝く力を失って急に暗くなるんですね。
その瞬間の反射板の、フっと陰る表情!
ここ、道の端だから気を付けて~と、元気に光っていた彼等が、通り過ぎようとする瞬間、
「・・・」
と急に元気をなくし、闇に帰るあたりが、いつまで見ていても、少し哀れでなんだか飽きなかったです~。
前回のドライブのお話での、どんな暗闇でもどこかで見守ってもらってるような感じ、というのが子供心にグっときてたのかなあ~。
あの頭がまあるい形もいいよね~。
助手席でうとうとしながら見ていた、そんな懐かしい風景。
大人になって、ドライバーになった今は、その感覚を味わえませんが、いつかまた助手席で、密かに楽しんでみたいなあ。
そんな昔の思い出話でした。