ちょっとガクガクーッときたお話。
なんてことない話なんですけど、ある日仕事を終え、電車で家路についておりました。
車内はある程度満員で、私はおとなしく座っていたんですが、前に立っていた60過ぎの、初老のお兄様の携帯が、急にチャンカチャンカ鳴り始めました。
電車の中の携帯の話し声って、なぜかよく通るんですよね。
なので、初老のお兄様も小声で話せばいいのに、ほろ酔いらしく、上機嫌で喋りはじめたんですな。
「うん、なに~?えっとね、えと今、溝ノ口ぃぃ。あとね、あとね、15分くらいっかなあ。そのくらいに着いててよ。うん、うん、じゃ~ね~。」
文章としてお伝えできるニュアンスは、これが限界なのですが、わかりますでしょうか、なんだかゴロニャンニャン!て感じなのです。
女性なら、まだなんとなく理解できますが(女性ならまず人前ではこう話さないか)、初老の紳士がいきなり
「うん、まだちゅかないよ~」
ってモードを、展開しはじめたので、周りは妙にソワソワしてしまうんですなあ。
お願いですから、そういうあなたを私には見せないでください、と言った気持ちです。
で、10分ほど経ち、またチャンカチャンカ来ました。
今度は何言うんやろ、と周りの意識が一斉に、初老のお兄様に向けられました。
期待と不安ですね。
「はいー、もしもし~(なぜかすごくウレシそう)、あのね~あとね~5分ぐらいだから、5分ぐらいで、たまプラーザに着いちゃうから迎えにきてよ。(だーれと喋っとんやろなあ)うん、うん、もうじき着いちゃうよ~。じゃ~ね~。ヨロピクー」
これを聞いて、周りの方々の心は、一斉にガクガクガクーっとなったです。
1日の終わりに、初老のお兄様、カマしてくれました。
ある冬の夜の、電車内の出来事、悪い話ではないが、そういい話でもない。
ただ一方的に、お兄様から、なんだろう?ボクの幸せ、かな? を、振りまかれたようなお話でした。