昔子供のころ実家に図鑑がありまして、雨のヒマな日とかに、よく眺めておりました。
ウチはそんな高尚な家でもないのに、なんであったんでしょうか。わりに一式揃っていたような記憶があります。
いろんなシリーズがありましたが、特に海洋生物の図鑑が好きでした。
岩場に隠れる小魚の絵とか、海藻の影で眠りにつくナントカとか、海の底のささやかな生活感がいろいろ想像できてハマってましたなー。
それにサヨリだのスズキだの、わりにしっかりとした絵が描いてあって、だいたいどの魚の説明文にも最後に、食べられるか食べられないかが、しっかり明記してありました。
しかも書き方が、食用だがまずい、とか、秋になるとうまい、とか表現がめちゃストレートで判りやすかったです。
今考えると、さすが、魚消費大国日本ですね。
そういう図鑑のすみずみにまで、食文化が色濃く反映してました。
あとは天候の図鑑もありました。
これは、個人的には超大好きで、挿絵がなんともいえず、イイ味出してました。
北風の強い街角の風景とか、雨の公園の絵とか。
なかなか奥行きある画法で、その場の空気感が伝わってくるようで、なんだか知らない街を旅してるようで良かったです。
あと、日本列島に吹き付ける、大陸の雪の様子を表したやつなんかがあったのですが、北陸地方の積雪を強調したいあまり、日本列島をムチャにねじ曲げて描いてありました。
きっとこれ描いた人は(だから冬でも角度的に九州には雪は降らないのである)と、言いたいんだろうなあと、子供心に、大人の世界の、作為的な意図を感じました。
ほかには昆虫シリ-ズ(これはバイブルでしたね)もお気に入り。
でも、イモムシの大群が木にへばりつく写真は、かなり気絶ものでした。
あと宇宙シリーズ。
超新星の写真(星の最後の大爆発のすがた。新星とは名ばかり)とか、青く元気に輝く若者星と、かたや黄色くボヨンと膨張してきた老人星の集まりの写真とか。
いつまでも眺めていました。
お隣の宇宙、大アンドロメダ星雲も、200万光年の先にいらっしゃるようで、距離も規模もデカすぎて空間としての認識が、まったくの想像外。
その非現実な感覚がやたら楽しかったです。
極めつけは日本語の図鑑。
じつはここの中に、日本語の文章の成り立ちみたいなのが書いてありました。わたしはそれをパクってですね、夏休みの宿題みたいなのに、軽い気持ちで提出したらなんと、担任から大絶賛を受けた事がありました。
担任は知らないもんね、そんな図鑑があるなんて。
だから夏休みの間に自力で研究したと思ったんでしょう。
あまりの絶賛を受けて、わたしの周りにはクラスメートの人だかりができたもんだから、その栄光を一回で終わらすのはもったいなく、3学期にももう一回ソレを書いて出したら、今度は、またか、みたいな冷たい顔されたのを覚えてます。
多分一回目の時、教員間にナベの自由研究のソレが、あまりに出来が良いがために、出回ったんじゃないでしょうか。
で、その時に、図鑑の存在がバレて、別の教員からウチの担任はその事を指摘され、結果恥をかかされ、顔に泥を塗られ、という結末になったのでは、と想像します。
そんなことはつゆ知らず、意外に先生だまくらかすのって簡単じゃーん、と思った記憶があります。
だが、その先の通信簿で、イタい目を見ることまでは想像できてなかったです。
いまだに懐かしい、心のシコリになってます。