旅に病んで夢は枯れ野をかけめぐる。
江戸時代の俳人、松尾芭蕉の生前最後の句です。
中学だか高校だかにこの句を知りました。
びょうびょうたる荒野に心を奪われ、その人生の大半を旅に過ごした、一人の人間の生きざまが、この句には凝縮されています。
人間も動物ですから、ねぐらと食べるものがちゃんとあって、フツーに平和に生活出来た方が、今も昔も良いに決まってますが、この句はまったく正反対の世界に位置してます。
まあ芭蕉さん程の俳人ともなれば、実際には行く先々でちゃんと厚遇を受けて、食うには困らなかったようですが。
それでも、今と違ってすぐコンビニがあるわけでもなし、ちょっと道を外れれば、野ざらしの行き倒れなんかも、普通にあった時代でしょう。
それでも旅に出る。風雅の道といえば聞こえが良いですが、かなり気合いが必要です。
それでも、旅することに心奪われるこの原動力は何なのか、というとまさに、この北風の吹きすさぶ荒野の風景、それなのでしょう。
バイクで夜走りしていると、特に寒風身に沁みる、冬の季節に走っていると、何とはなく、芭蕉の魅かれた枯れ野の世界の匂い、が解る気がする時があります。
心のタガが外れて、空の彼方に意識が飛んでいったような自由な感覚、それは匂いに触発される時もあれば、行き交う風景に何かを感じることもあります。
いずれにせよ、一種のトランス状態とでもいいましょうか。
説明出来ない何かに動かされて、芭蕉も一生を旅したのでしょうか。
寒さがまだまだ厳しい季節、インフルエンザなども流行ってますから、皆さんお気をつけ下さい。
ではまた。