とんどころ。
海に沈んだ7つの村。
海の藻屑となった200人以上の村人達。
ごく身近に、そういった伝説があったのを知りました。
先日帰省した際、
【土佐の国。かつて地震で水没した村があり、海底に横たわる石の建造物から、地震の規模を探る】
というTV番組を夜、オヤジ殿と見ていたら、オヤジ殿がポツリと
『おら、これあ、トンドコロといっしょじゃが』
と、ポツリと言いました。
トンドコロ、初めて聞く地名です。
『なんねそれ?』
と聞いたら、
『木花ン先よ。あの辺一帯はむかーしは村がたっくさん、あったらしいとよね。
それが地震で、全部海に沈んだっちゃげな。
お父さんが子供ん頃、与平爺ちゃんから聞いた話じゃから、ようと知らんちゃけどね。』
外所、と書きます。
今から約350年ほど前、日向・大隅の国、飫肥藩領に、この世も最後と思われるような大揺れが来て、その直後5mの大津波に襲われました。
村人たちは這々の体で避難したが、一夜明けたら目の前には広大な入り江が広がり、村々は跡形もなく海に消えていた。
調べてみるとかなり古い地震で、寛文2年(1662年)に発生したM7.6もの巨大地震だったようです。
平和な宮崎にも、過去にそういう知られざる、禍々しい伝説的歴史があったことを知りました。
現代では、あまり耳慣れず馴染みがないというか、現代の常用単語として使いそうもない
『とんどころ』
という地名に魅かれて調べてみたのですが、その昔ぶりな地名とともに海に消えた村は、建てられた石碑の前で、今だに50年ごとに慰霊祭が行われているそうな。
甚大な被害を及ぼした史実ではありますが、その350年前の供養を、今だ律儀にやっている部落の人達。
そんな純朴さにどこか感動を覚え、また実際に、その昔その村にいた人々の、杵を突く生活の音が、今も潮騒の波間から聞こえてきそうな、そういう不思議な気持ちになった、2015とんどころの夏、でした。