2007-09-01

甥っ子姪っ子

 夜の塚原団地は、とても不気味な静寂に包まれていました。

 

 でも、なべ姉弟にとって、それらの風景は全て、人生のルーツに直結しているので、そんなお化けの出そうな廃屋群でも、怖さなど全く感じず、ひたすら懐かしさだけに浸っています。

でも甥っ子姪っ子は、恐怖のどん底です。

『ねえ、じゅんいち、もう行こうよお。」

二人で後ろの席で、ぶつぶつ言ってます。 

 

 「ん、じゃあ、姉ちゃん、山王原(さんのうばる)児童館に寄って帰ろうか。」

姉「あ、いいね」 

甥っ子姪っ子「うん、そうしよ!!」

二人は、山王原児童館とは何なのか、訳もわからず、ただこの不気味エリアから脱出できる事で、大賛成してくれました。

 

 昔、僅かな期間通った幼稚園。

山王原児童館は、塚原団地からは、歩いて5分なので、車ですぐ着きました。

山王原児童館はどうやら健在で、多少リニューアルされて、今でも使用されている様子です。

 

 ただ昔、山王原児童館ヘの行き帰りの時に、気になっていた正体不明の小道があり、その道は、児童館の前から伸びていました。

 

 なぜ正体不明なのかというと、その道は、鬱蒼とした木々に挟まれ、昼でもなぜか妙に薄暗く、道の先は、薄暗がりに溶け込み、さらにはその道を歩く人を、子供の頃全く見たことがない、という、これまた不気味な記憶があるからでした。

 

 ヘッドライトに照らされ、暗闇に不気味に口を開けるその道を見ながら、

「そうそう、姉ちゃん、この道。これ、いったいどこに続いちょるっちゃろねー。昔からナゾやったっちゃが。」

宮崎弁で、あねさんに一言ポツリと言うと、後ろで一斉に、

「え~~~!!!やだやだやだ。ぜったいい行かない。ねえ、やめようよー!」

と大ブーイング。

残念ながらナゾはナゾのまま、三股の夜空に隠れてしまいました。

 

 「じゃ、最後にもいっかい団地ちょこっと見て帰ろうか。」

というと

「え~~!また行くの~?」

そんなこんなで、団地脇を通っていると今度は、あねさんが

「そういえば昔、おかあさんと順一と川であそんだがねー」

と言ったので、

「じゃ、車で、できるだけ接近してみようか?」

と言うと、子供達は

「もうやだ~」

ときましたが、今度は姉ママの提案なので、我慢しているみたいです。

 

 川の思い出は、わたしには全くないのですが、どうやら、ご近所さんたちと連れ立っての川遊びだったようです。

姉貴さまは、その時のピクニックが、とってもとっても楽しかったらしく、それを強烈に記憶しているみたいです。

なので、できるだけその楽しい思い出に浸ってもらおうと、頑張って川近くの農道を、果敢に分け入っていきました。

 

 でも、宮崎の自然環境は、基本的に放任主義なので、人の手の入りにくい川沿いの小道は、もうほとんどジャングルです。

アフリカの大地を分け入る、キャラバン隊みたいな様相を呈してきました。

はっきり言って、5メートル先の地面の状態がどうなのかは、枯れ草が積っていて、ヘッドライトの光だけでは、そこが固い土なのか、あるいは沼地なのか田んぼなのか、はたまた実は、あと少しで川に転落するのかいっさい判りません。

 

 やばい空気の中、会話が一切なくなった大人二人を見て、うしろは大パニック。

「じゅんいちってば、帰ろう、もうホントにやだ~!」

しかも、今度はあねさんまでが

「ねえ、もう帰ろうよ~。」

といってきたので、今回はこれにて終了することにしました。

 

 帰りは、新しくできたバイパスは使わず、懐かしい旧道を辿って一路、我が家に帰りました。

途中、思い出のケーブルカーとか、古くなって使われなくなったトンネルとか、まだまだ見てみたい思い出スポットは、たくさんあったのですが、それやると子供達に嫌われそうだったので、今度一人の時に、こそっと見に行く事にしました。

 

 帰りは、交通量の極端に少ない山の中に車を止めて、甥っ子姪っ子たちと、やまびこ実験をして遊びました。

何年ぶりでしょうか、久しぶりに大声だして

『ヤッッホーーー!!』

叫びましたね。

そして耳を澄ますと、ホントに山の向こうで、かすかーに

「ヤッホー」

と言っておりましたよ。

なんだか山の向こうに、お友達がいるようで楽しかったです。

 

 散々なミステリーツアーに巻き込まれた、甥っ子姪っ子ですが、幸い彼らには嫌われずにすんだみたいです。

ふたりはそれからも、いろいろとよくしてくれ、ある重要機密情報まで教えてくれました。

「ねえ、じゅんいちー。パルキアとディアルガってホントはどっちが強いか知ってる?」 

なべ「ううん、知らない。」

「実はパルキアの方がホントは強いんだよ。」

なべ「ふ~ん、、そうやったんや。」

「小さい時はディアルガなの、でもね、でもね確実に、パルキアの方が絶対強くなるんだよ。」 

なべ「??? そーかー。」

 

 そのあと、使い方の判らないDSを、わざわざ貸してくれて、パルキアの必殺技の出し方まで、懇切丁寧に教えてくれました。

 

 ありがとね。こんどお小遣いあげるねー。