夏ですね。いよいよ。
それに先駆けて何と身も凍るような 夏の風物詩の恐怖体験をしてしまいました。
先日ライヴがあったのですが、最近ライヴで着るお洋服が、少々ネタ切れになってきました。
ので、近くのデパートに買いに行きました。
私は腕がちょっと長いので、行ったのは紳士服売り場の、デカ目サイズ売り場コーナーです。
で、ジャケットコーナーで2.3着良さげなのを選んで、鏡の前で試着していたその時です。
右端の視界に入ってきた女性が、なぜかスウーッと急接近、あろうことか、今ちょうど試着中のジャケットを、いきなり持って行こうとしたんです。
あまりのとっぴょうしもない行動に、一瞬ワケが分からなかったのですが、束で置いてたから勘違いしたんでしょうか。
『あ、それ今、ボクが見てるとこなんで。このジャケットはそちらのコーナーにありますよ。』
と、教えてあげました。すると、
『あ、あらそう。ホホホ。コッチのコーナーね。ごめんなさいね。』
なんて、にこやかにおっしゃいました。
おっしゃいましたが、なーんかそれから妙に絡んでくるんですよね。
『うーん。やっぱりイマイチねえー。すいません。この色にカーキのズボンで合いますでしょうか?』
『これはデザインがねえ、ちょっと合わないのよねえ。』
『これいいんだけどサイズがないわねえ。』
とかブツブツ。しかも
『ちょっとこれとこれ、持って頂けます。』
とかいってなんか手伝わされるハメになりました。
なんで?
僕も選んでる最中なんだけどな~と、ちょっと迷惑に思いながらも、まあ愛想よくしながら付き合っていたんですが、その方ニコニコしながら、私の選び中のジャケットをチラっと見て、
『それ、お買いになるんですか?』
と、言ってきました。
あ、やっぱこれ狙いだったか。
さっきのは知らなかったんじゃなくて確信犯!
と、急に危険信号がともったので、
『ハイ!これは買います!』
ハッキリハキハキと宣言しました。
きっとそれは、ご婦人が目をつけていたジャケットなんでしょうが、目を離した隙に、たまたま私がそれを試着し始めたものだから、あっ!と思ったんでしょう。
でも大事なライヴ衣装ですからこればっかりは引き下がれません。
するとご婦人、
『そうですか。失礼しました。ホホホ。』
と素直に引き下がりました。
笑顔がとても品があって、でもぜんぜん悪そうな人じゃないんですね。
でも、なぜかそこからヒートアップしてきて、
『あ、もう一度これ持ってもらえません。』
『あなただったらこちらとこちら、どっちを選びます。』
『主人がカーキのズボンしか履かないから、これだと合わないわねえ。こちらはどうかしら。』
なーんてニコニコ。
でも直後に、
『こっちだとデザインが合わないのよねえ。』とブツブツ言い出します。
で、わたしのジャケットと、同じ型のジャケットを探し出し、
『あ!コレいいわ!素敵!』
とおっしゃったんですが、急にガックリと、
『あ、これLか。Lなんだー。Lだと主人お腹出てるからどうしても合わないのよねえ。』
と、あからさまに譲ってくれとばかりだったので、こっちも必死で愛想よく、
『いやボク、腕が長いんでLLなんですよ。それにこのジャケットは前のボタンは締めない方がカッコいいからお腹は大丈夫ですよ!』
と、目線を上げてご婦人の顔を見た時です。
目が合ったそのご婦人の顔は、、、、ニコリともしていませんでした。
そう、その眼力たるや、まるで誰もいない部屋なのに、なぜか何処かからジッと見られているような怨念の視線、といったような目線。
ブラックホールというものがあるとしたら、まさにこんなんじゃあないんだろうかと言った感じ。
クオッ!と一瞬でその目の中に、吸い込まれそうになりました。
いやマジで。
よく幽霊は怖い、と言いますが、、、、、、、生きている人間の方がじゅうぶん恐いと思います。
もう恐くて、早々に選んでいたジャケットを鷲掴みにし、レジに向かいました。
あのままあそこにいたら、何が起こるか分かりませんでした。
きっといいように丸め込まれて、ジャケットを取り上げられていたでしょう。
でもレジを終え、通路を歩き、ビブレの建物を出た後も、そのご婦人にうしろを付けられているような、みょうな違和感がありました。
それはきっと真の恐怖を味わった人間にしか判らない、怯えからくる妄想なんでしょう。
でも、あの執念の宿った顔つきには、絶対に対抗できませんな。
特にあの目、には。。。。。。
なのでジャケットは、せっかく買ったのに、なんか気になって結局夏ライヴでは着ませんでした。
いや正確に言うと着れませんでした。
演奏中にあの目を思い出しそうで。。
なのでしばらく寝かして、記憶が薄れた秋頃に着ますね。