私の家の近くには、地元に愛されるスーパーがあります。
ちょっと歩いた先に、天下の東急マーケットがあり、そこが幅をきかせているので、大半のお客はそちらに取られていて可哀想なのですが、潰れずによく頑張っています。
私はどちらかというと地元スーパー派なのですが、そこに変なレジ係がいます。
ここ半年ぐらい、ちょくちょく遭遇する、その彼は年は20才前後。
ちょっとふくよかな、色白の床屋さんカットの男の子です。
他のレジ係は、ご近所の主婦の方ばっかりで、若い男性としては、ちょっと年代的に話が合わない職場かな、という感じですが、彼はそういうことは、全く気にならないようです。
そう、彼はレジ係に命をかけている様子なのです。
はじめて彼のラインに並んだ時は、彼のレジさばきが素早すぎて、財布からお金を出すのに焦りました。
かといって、決してつっけんどんな応対ではなく、言葉遣いはとてもおだやかです。
ですが、動きは早すぎ。
最近は面白くなってきたので、よく観察するようになりましたが、彼の動きは一言でいうと、五倍速の太極拳。
”華麗なる舞いの精神” と ”レジ打ち” との融合。
と、言ったとこでしょうか。
普通レジでは、前客の空になったカゴに、次のお客の商品を入れていきますが、彼のラインでは、このカゴがまずシュタッと移動します。
それも動き的には、シュタッ、ピッッといった手首の動きが入っています。
つぎにその手首をクイッとしならせて、商品を手にとり、読み取り機に当てていきます。
サッ(手に持って)、
クイッ(手首反転・レジ照合)、
ピッ(静止、読み取り)、
パッ(持ち手の移動)、
クイッ(再び手首反転・空カゴヘ)、
コソッ(カゴに商品着地)。
この一連の動作が、最後の商品まで続きます。
そして読み取り終了と同時に、左手でレジの小計ボタンを押しながら、
『お会計は~~になります』
と、言いながら。すこし反らせた右手を。ファサ~といった感じで横移動(これがナベのお気に入り)させながら、開いたレジの上に、音もなく置きます。
ここで(おもろいなあー)と、ぼんやり眺めてたお客があせります。
慌ててお金を取り出し、お客がお皿に置くやいなや、奴の音無しの右手が素早くしなやかに、シュピッとお金をかっさらい、まずクリップにホールド、と同時にマシンみたいに次々に、釣り銭を左手に入れていきます。
無論、全ての動きは、クイッとした手首ひねり入りです。
そしてフィニッシュ。
半円を描くように右手を舞わせ、お客の手のひらに、一呼吸置いてスッと、彼の左手がお釣を置きます。
まるで優雅な日本舞いでも、眺めているかの如しです。
昨日はその一連の動きを、後ろのおばちゃんレジ係りが、迷惑そうに見ていたのが印象的でした。
彼って、やっぱりこの店で浮いてるのかなあ。
辞めないでほしいなあ。