2016-08-15

職人

 こないだ、前歯をガキッと損傷してしまいました。

カルシウムが足りなくなっているので、至極アッサリと欠けてしまったのですが、何がショックって、50年以上生きてきたはずの自分の体の一部が、至極アッサリと砕けてしまったその事実。

時の変化に、超落ち込みました。

 

 で、いつもそういう時の唯一の解決法は、、、なかったことにするのです、そんなことは。 

ただ今回は、口の中で舌先に前歯がザラザラ当たって、そのたびに落ち込むので、もう機械仕掛けの人形みたいにすぐ歯医者の予約をしまして、次の日には治療しました。

 

 で、かかりつけのその歯医者さんは、ふんわりされたお医者さんなのですが、とても丁寧で、例のキュイーンとかも、痛い時こっちがちょっと眉をしかめただけで

『あら、ちょっとしみるね。しみるってことは神経は健康な証拠だから大丈夫ですよー』

と、手加減しながら、なんか小声で仰ってくれます。

痛いときにいちいち手をあげたりしなくていいから、そこの歯医者さんはとても気分的にラクです。

 

 で、、今回なんと

『うーん、このとなりの前歯のくすみは、合成樹脂の差し歯だから、どうしても仕方ないんだけど、だいぶ色がついてるから、すこしでも、色が揃わないか、やってみますね。

あとこのこっちの亀裂も、ちょっと樹脂で固めて色を少しでも、、、etc』

 

え???なんですと!

 

 そう、実は20数年気になっていたんです。

この差し歯のくすみ、、、これをこの先生はなんと綺麗にしてくれるらしいですって!!と。 

欠け歯のショックから、怪我の功名! 

そう思ってる間に、キュイーン、ガリガリ、ペタペタと作業は開始!! 

その変色した差し歯を地均しし、その上に樹脂をヌリヌリ。

欠いた前歯の修復どころか20年来のひそかなお悩みまで、なんと20分で奇跡の復活を遂げたのでした。

 

 その鏡で見た復活前歯は、中1の時に黒山君(彼は当時すでにタバコの吸いすぎで、歯がヤニッ歯だった)が会うたびに

『渡辺君の歯は真っ白でいいね』

と、やたら褒めてくれてたあの時の栄光を、贔屓目ながらも彷彿とさせてくれる出来栄えでした。

 

 歯医者さんは職人だなあ。。。

しみじみと、その鏡を見た時の感動を思い出しながら、そしてカチコチのあずきアイスをガリガリと食べながら、夏の風物詩、譜面書き作業に勤しむ、2016夏休みでした。