2004-02-01

帰りの警笛

 子供の頃のおはなしなんですが、わたしは汽車がとても大好きでした。

 

 都会の方はすでに電車だったんでしょうが、私が子供の頃の宮崎は、まだSLが健在でした。

なので、いまだに鉄道のイメージとしては、単線で草に半分埋もれたレールを走る、窓のあく茶色の客車を引くSL、いわゆる汽車。

もしくは ”キハ”という名前の、ディーゼル列車なのです。

 

 で、毋方の田舎が、海沿いの田舎町で、よくひとりで汽車に乗って泊まりにいったのですが、小3の頃のクラスの担任の先生は、子供心にとてもおそろしいオバチャン先生でした。

どう恐ろしいかといえば、優しく語りかけてくれた、次の瞬間、

 

” なんですって!渡辺くん!宿題忘れたですって!カーッ!”

 

という具合に、いきなり豹変するその速度(段階的に怒るんではなく、ホント一瞬で、目が吊り上がるんです。ブルルッ)に、まだ子供ですからとても対応しきれず(なら宿題してこい!)、つらい学校生活でした。

なので土曜の夜は、現実から逃避して、じいちゃんばあちゃんに優しくしてもらえる田舎の夜を、心の底から満喫しておりました。

 

 でもやはり月曜日は、やっぱり来ちゃうんですねー。

満喫ばっかりしてるから、また宿題してないでしょ。悪循環。

もう家に帰るのがイヤでイヤで、ジイバアがまた孫に優しいから、甘えてしまって余計帰りたくなくて、ダダをこねておりました。

 

 ちょうど田舎の家のすぐ上は、線路が走ってたので、帰りの宮崎行きの汽車が、ブワンとか警笛を鳴らしながら、ゴオーって、駈け過ぎていくんですね。

来る時は幸せを約束してくれた汽車ですが、あの帰る時ほど、乗りたくねぇ~(泣)、と思ったことはなかったです。

 

 結局、粘って2.3本遅らせるんですが、その間まー切ないくらい、一生ここにいたい、野島(地名)にいたい、ジイバアと暮らしたいと思いつめました。

 

 そして夜も遅くなったんで、汽車ぎらいのジイちゃんに手をひかれて、仕方なく海辺の無人駅に行き、暗いトンネルのむこうから出て来たディーゼル2両編成に、ジイちゃんと共に乗って帰りました。ジイちゃん、汽車嫌いなのに、頑張ってくれてたなあ。

 

 ジイちゃんバアちゃん、ホントあの時はありがとねー。

今回は汽車にまつわる、懐かしいお話。

お付き合い、ありがとうございました。