『ちょっと! 今日誰よ!!』
突然の怒り声に、駐輪場でバイクを引きずり出そうとしていた私は、ビクッと振り返りました。
声の主は、階が斜め上の奥さんでした。
この方、奥さんと言ってはなんなんですけども、平素から茶髪、黒ラメ&メタリックの超ミニスカート、香水プンプンお化粧バリバリの、実に現役ヤンキー風。
暴走族のあねさんと言った感じの60代の方で、その痩せた目から発する眼光の鋭さといったら。
もう前回のビブレでの笑わない主婦の方の、恐さに匹敵します。
『もう朝からずうーっと待ってるの!だれよ!今日は?』
平穏な団地内に響き渡る罵声。
不意に責め立てられたその相手は宅配のお兄さんでした。
トラックのお兄さんもうビビリまくり。
『すいませんっ!急いでたんですけど遅れてしまいました!』
『もう今日は用があるから朝イチでって頼んでおいたじゃない。もう何よ!あなた誰!!』
もう強烈な怒りの雷が、降り注いでおります。
『すいませんでした。石川です。。。』
お兄さんがトラックから降りてきたこの瞬間!
あねさん主婦は豹変しました。
『あ!イシカワさんかあ〜💗。いっつも仲良くしてくれている。そっかそっか。今日遅くなったんだ。ゴメンゴメン。
いやほら、今日これから出掛けなくちゃなんないからさ、急いでたのよ。いいよいいよ。まだ間に合うから。
あ、それとさ、明日も頼んでるのね。ひとつ。で、それはさ着払いだからゼーンブ計算してお金はポストに入れとくね。
だから玄関置いといて💗
うちはさ、誰も取ったり悪さしたりしやしないからダイジョーブよ。(そらそうだろ)
で、もし足りない時に多めに入れとくから。で、もうそれはお釣りいいから取っといて。返さなくていいから。
そっか、石川さんか、いつもアリガトね。これ待ってたんだ。今日急ぎだから営業所に頼んでおいたの。
いいのいいの。大丈夫。間に合う。で、明日も石川さん。あそう。んじゃそんなして玄関においとくからさ。また明日も頼んだね。ん、ありがとありがと。』
じつに気のいいお姉さんに変わりました。
この奥さん、普段は廊下ですれ違っても挨拶が返ってこないので、(よって私のあいさつ運動の対象外の方)実に不機嫌そうに見える恐ろしいイメージだったのですが、豹変したその素顔はじつに爽やかでにこやかな女の人でした。
それでも眼光は、織田信長みたいに強烈に鋭いんですが。
怒りに任せてガーッと最初にまくしたてても、相手によっては、その怒りを瞬時に笑顔に変えて、今後を見据えて仲良く終わる。
お気に入りの相手なら尚更。
そうすることで、相手も次回から細心の注意を払うようになり、かつ遺恨を残さない。
このあねさん、やはり只者じゃないなと思いました。
小心者の私には到底出来ない。きっといろんな人生の修羅場をこれまでさんざんくぐり抜けてきた結果、この人なりに身につけた、ヤンキー流人間操縦法なんでしょう。
今回は、ちょっとフーンと思った身近なお話でした。
みなさんいろんな一面があるんですな、と最近つくづく思います。
世の中、いろんな人がいてとても勉強になります。
でも今日のは、チョー恐かったな。