2005-03-01

鬼のいる曲がり角

 もう春ですね。ということで、今回は、子供心に春の空なお話です。

 

 40年前の日本は、まだまだ未開の国といった感じで、、 道路なんかもちょっと脇にそれると、かならずジャリ道だったような気がします。

 

 私が幼稚園にちょうど入った頃というのは、まわりの景色もそんな田園風景が広がっておりました。

その事件がおきたのは、幼稚園に通いはじめて2.3日目のころだったと思います。

 

 その朝、私ははじめてひとりで幼稚園に向かいました。

昨日までは、母親と楽しく通ってたのですが、今日から一人立ちです。

その道は、もう歩き覚えた道ですが、かすかな不安と共に歩いておりました。

 

 で、長屋の団地がとぎれたところでふと、左のほうをなにげなく見たんです。

なんとそこには、真っ赤な目をキンと釣り上げた、世にも恐ろしい鬼が、バーンとこっちを睨み付けておりました。

 

 もう度肝を抜かれて、ビックリしたのなんの!

『ギャ~!』と泣き叫びながら、一目散にお家に走っていきました。

 

 半狂乱のちび息子に母親もびっくりしたでしょう。

で、結局その日も一緒に、幼稚園にいくことになったのですが、その鬼の顔の正体は、といいますと、ジャリ道にとめてあった、軽自動車の後ろの顔だったのです。

 

 昔の日本車というのは、見た感じ子供心に、顔の表情に味があって優しい顔、キッと恐い顔、すま~した顔、と色とりどりでした。

で、チビナベの見た車というのは、前の方は目がキョロっとしてて愛嬌あるんですが、後ろ顔は、赤いテールライトがキイーっと釣り上がっていて、もう腰を抜かしてしまったんです。

 

 で、そのあとはですが、大人になってから聞いたところによると、うちの親がその車の持ち主に話して、車の向きを反対側にして、止めてくれるように頼んだそうです。

 

 チビナベが通園中、見なきゃいいのに、なんかとっても気になるんでしょう、見まい見まいとして、どうしてもチラッと見てしまうんですなあ。

で、『ギャ~ア~!』となって、家に帰る、という。

 

 でも、その持ち主の人もいい人で、しばらくたつと丸い目の前の方を向けて、止めてくれるようになりました。

なんか昔の人って、余裕があったというか、優しいですよ。

それでナベはめでたく一人で、幼稚園に通えるようになりました。

 

 でもたまに、その車の持ち主がその事を忘れて、後ろ向きに止めるので、その後も1、2回は騒ぎになった記憶があります。

 

 こうして春が近付いてまいりますと、やわらかくなった空気の匂いに、ふとその頃のことが思い出されます。

子供の感性ってほんと面白いですね。

今でもその言葉にならない、びっくり感覚はうっすらと、なつかしく憶えています。

 

 子供にとっては、世の中は未知のことだらけですから、そういう風に感じることができたんでしょう。

面白いですね。

 

 

 

 

 

 

 

子供目線だと、両目が釣り上がって見える形状。

そう考えると確かに怖いのも、道理かも。