2017-05-15

土曜に旅

 皆さん、pm2.5等の吹きすさぶ中、ご機嫌麗しくお過ごしですか?

 

 なんだかダラダラと忙しく、やることに追われて、月日が経つのが超早い気がします。

そんな時は、やはり心のどこかで癒しを求めているせいか、ふと、ああそうだ、帰ったら久しぶりにあの本見てみよう、とかユーチューブであの懐かしい映像を見てみよう、とか思いついて、ウキウキするのですが、残念ながら家に着いたらもう既に、何をそんなに楽しみにしていたのかを忘れてしまっています。 

なので、強制的にユーチューブを開いてみました。

今日の癒しは、たまたま夜行列車の車窓の映像でした。

 

 カタンカタンと続く規則的な継ぎ目の音。

時折ネコが鳴いているように通り過ぎる踏切の警報音。

遠くのネオンがゆっくりと移動していくただただ真っ暗な車窓。

うっすらと明かりが灯っている停車場の建物の隅。

ガラガラの車内なのに律儀な音声案内。

地方都市を結ぶ寂れた特急の映像です。

 

 それを見て、高校時代、サックス片手に田舎の中学校のサックス吹きの理科の先生にガッキの吹き方を習いに行っていた頃を思い出しました。

将来はサックスで生きる、と心の隅ではっきりと決意していた割には、実際には隣町のちょっとサックスが上手なおじさんに手ほどきを受けに行く的な、なんか実に中途半端なスタンスでしたが、ツテのない当時の状況では、それでもハリキッテ毎週土曜日に、宮崎から日向へ片道2時間旅。

特急にちりんに乗って行っていました。

 

 そう、ちょっと楽器の上手な理科のおじさん、ですから、サックスの奏法について飛躍的な何かを伝授してくれるわけではなく、それでも今思うと、田舎ならではの親切な良いお方だったなあと、心から感謝しています。

 

 まあ実際には成果は何もなく、それでも半年くらいはマメに通ったでしょうか。

今考えると、わざわざそうして通いつめることに、一定のやった感を感じていたんでしょう。

そうして、9割の達成感と、いったいどう上達したのだろうか???という、正直な疑念1割とを感じつつ、毎回帰途についていました。

 

 帰る頃にはもう、夜遅くです。

遅くったってせいぜい8時くらいですが宮崎では、夜の帳がすっかり下りています。

帰りの車窓は、そんな田舎の何もない夜の風景でしたが、九州の高校生にとってはちょっとした旅行です。

サックス習得というのは口実で、ただ単に旅がしたかったのかもしれません。

3~4千円もらって乗車券を買い、残りの何百円かで肉まんあたりを買い、いや、ガマンして買わなかったかな。

なんだか、いつもハラを空かせていたような記憶があるが。

高校生ですから、質素なもんでした。

 

 それでも、この特急の旅はとても楽しみでした。

楽しみといえば、いつも帰りの列車では、佐土原駅で他の特急の通過待ちになってたのですが、当時の佐土原駅は、ホームの待合所が、古い木造の長椅子に古い木造の屋根でした。

その三角屋根に吊るされた電球の明かりが、古びた屋根の裏の陰影をぼうと浮かび上がらせるのに、なんだか古い歴史の影みたいなものを感じていました。

なんかいつも、食い入るようにそこの裏屋根の木目を、眺めていたのを思い出します。

 

 そういや、一度お父さんと妹が同行したことがあったなあ。

子供が何かに一生懸命なのを見るのは、親は楽しかったのでしょう。

帰りの列車の中で、親父殿はニコニコしていました。

でもまあ、かなり突飛な行動とは思っていたでしょう。

 

 というわけで、書きながら、あまりにも懐かしかったので、自分だけ勝手にこころが癒されてしまいました。

みなさんは何も癒されてはいないでしょうが、お付き合いありがとうございました。