2020-07-01

日南線の旅

 旅日記。宮崎日南線の旅。

 先日帰省した際、昔母親と旅した、ローカル線に乗ってきました。

当時、子供心に印象が深かったのが、眼下に見えた深い碧(みどり)色の豊かな渓流の流れです。あんな美しい自然は、田舎育ちの自分でも、それまで見たことはなかったです。

 

 汽車(と呼んでました)が山間部に入ると、不意に窓の下に広がったその川は、碧色にとても澄んでいて、神秘の湧水とでも言いましょうか。

山間部なので、川幅は10メートルにも満たないのですが、その水深はなかなか勇壮で、2、3メートル級の大岩がゴロゴロと川底に深々と沈んでいて、澄み切った川の水は、その川底の影までクッキリと窺うことが出来るほどでした。

 

 川面の反射が、木々の隙間からキラキラて見え隠れしていて、ゆったりと流れゆく豊かな水量はなかなか圧巻な眺めでした。

ザバンと飛び込んだら、さぞかしひんやりと気持ちよかったでしょう。

 

 で、今回はそれがただ見たくて、急に思い立った久しぶりの日南線でした。

 

 日南線とは、南宮崎駅と鹿児島の志布志を結ぶ全長90キロにも及ぶ長大路線です。

以前にはさらに以南の鹿児島、以西の西都城を結んでいた雄々しき地方路線で、人も物資も多くがここを拠点に離合集散、志布志駅は南九州の重要なハブステーションでした。

 

 ですが、今やそれらの線はほとんどが、

” つはものどもが夢の跡 “

全て、夏草の生い茂る山谷へ埋没。

 

 かろうじて、生き残った南宮崎〜志布志間の路線が、昔の華々しい生涯を今に伝えています。

 

 現在、日南線の時刻表を見ると、終着駅志布志への直通列車は早朝5時台、お昼、夜6時台と数えるほどで、ほとんどは途中駅の油津、日南まで。

今回乗車した快速日南マリーン号も、快速とは名ばかり、29駅ある中、通過駅はたったの3駅。

列車も一両だけで、もはや『列車』ではない有り様。

 

 定員96名の、昭和57年富士重工製キハ40に乗り込んだ乗客は、自分を含め9名。

今回この旅の道行きで、この気動車に10名以上が、一度に乗り込むことはありませんでした。

 

 でもそれでも、ガラガラガラとディーゼル音全開でエンジンブン回して必死に加速する、ご老体の死にもの狂いに頑張る姿が、もうなんだかめちゃくちゃ萌えて萌えて、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日南の海



 続く。