2020-09-15

人の心も捨てたものではない

 私の知り合いに、ちょっと風変わりな人がいまして。

 

 家はちゃんとあるのですが、片付けがチョー苦手らしく、今年の夏に遂に部屋の中の散らかり方が限界マックスを突破。

その日を境に、車内泊をするようになりました。

 

 車内泊は主に近所の公園らしく、彼はそんな快適な、浮浪者テイストなエキサイティング泊を気楽に楽しんでいたのですが、ある朝、不意に窓ガラスをコンコンする初老の男性が。

 

 ビックリして、寝ぼけまなこを擦って窓を開けると、
『オハヨーございます。ハイこれ!!』
と、いきなり千円札を握らされたそうです。

『えっ、、えっ、?えーーっ!?!』

まだ意識が覚醒してない中、想像外の展開におたおたしていたら、
『いいの、いいの!!僕も若い時はそうだったから解るの!!大変なんでしょ!』
と、グイグイお札を押し付けてくるではありませんか。

 

 結局、そのまま千円札を握らされ、1時間ばかり、その人の若い時の身の上話を延々聞かされたそうです。

きっとその初老の男性にとっては、私の知り合いの車中泊が、野望だけを寄りどころにしていた、若かりし自分の姿を見るがごとくだったんでしょう。
ちょっとファンタジー♪

 

 で、その後もたまに朝コンコンされるようになり、たまに

『ハイこれ!!』

と、千円札を差し出し、握らされるようになり、すっかり参ってしまったその知り合いは、

お気持ちはありがたいですが、仕事はちゃんとしてますし(家もちゃんとあり、かつそこが住めない程めちゃくちゃ散らかってる件は言わなかった)これ以上、お金をいただくなどの厚遇は大丈夫ですから、

と、やんわりとお断りしたそうです。

 

 が、次の日の朝、車中泊の眠りから覚めた時に不意に予感を感じ、エンジンをかけて急ぎ公園を出たところ、道の向こうから今度は薄手の毛布を抱えて、いそいそとこちらへ歩いてくる、その初老の男性の姿を見たそうです。

 

 いやあ、なんか世知辛い世の中ではありますが、まだまだ人の心も捨てたものではないですな、ということと、

いやあ、世の中意外に勘違いで成り立ってますなあ、

ということと、

いやあ、もうどこ行っても人の目にさらされて安息の地はありませんなあ、

ということ諸々を感じた、と申しておりました風変わりな知り合いのお話でした。

 

 まあでも総括としては、とてもとても良い話だったような、気がしました。

おわり♪